横浜地方裁判所川崎支部 昭和36年(ワ)34号 判決
以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。
〔判決要旨〕時効の援用権は、民法第四二三条第一項但書の規定に所謂債務者の一身に専属する権利とはいい難く、配当異議の訴に於ける原告は自己の債権を保全するため債務者に代位して、他の債権者に対し時効を援用し得ると解するのが相当である。
〔判決理由〕一般債権者は同一債務者に対する他の債権者の債権の消滅により直接権利を得、義務を免れるべき者でないから直接には民法第一四五条に所謂当事者に該当しないことは言うまでもないが、時効の援用権は債務者の財産上の利益のために認められるものであるから、特に債務者の道徳的感情を尊重し、債務者が無資力で自己の債務を完全に弁済できない場合にもなおその行使を債務者の決意に委ねた行使専属権と解すべきでないので民法第四二三条第一項但書の規定に所謂債務者の一身に専属する権利とはいい難く(かかる解釈は時効援用権者に関する旧民法証拠篇第九七条二項、財産篇第三三九条、フランス民法第二二二五条の規定等の沿革的、比較法的考察からするも許されると考える。)配当異議の訴に於ける原告は他の債権者の債権が時効によりて消滅するにきは自己の債権に対する配当額が増加するから自己の債権を保全するため債務者に代位して時効を援用し得るものと解するのが相当である(東京控訴院昭和一二年九月二七日判決、法律新聞四、三四四号七頁参照)。
なお、被告は、債権者代位権に基づく時効の援用をなし得るとすれば、被告もまた債権者代位権に基づき時効完成後の債務承認ができることとなるから時効の代位援用は許されないというが、債権者代位権は債権者が自己の債権を保全するため債務者の財産の保存、増加をはかるためにのみ認めらるべきものであるから債務承認の如き財産の減少を目的とする行為は代位援用できないのでその主張は失当である。(田口邦雄)